「腎機能に応じた投与設計の為に情報共有をしましょう~CKDシールの提案~」
くまもと温石病院、熊本PK-PD研究会 森 直樹先生
国内成人の8人に1人がCKDと言われてます。CKDの定義は、①尿検査、画像・病理診断や身体所見などにおいて、血液腎障害を示唆する所見が明らかである。②GFRが60 mL/min/1.73m2未満に低下している。①②の何れか、または両方が3か月以上継続することです。
イヌリンなどを用いた、糸球体濾過量を測定するのが厳密ですが、現実的ではないためCcrやeGFRが代用されています。Ccrの測定には、酵素法とJaffe法があり、ピルビン酸などの影響があることも、薬剤師として知っておいたほうがいいと思いました。eGFR(ml/min/1.73m²)は170㎝、63㎏の体型を前提とした数値です。高齢や肥満などの影響を考慮するため、体表面積で補正したeGFR(ml/min)の確認も必要となります。高齢や肥満では、各指標でばらつきが出るため、安全性と有効性を考慮し、どの値を用いて投与設計を行うか検討します。シスタチンCもGFRのマーカーとして優れていますが、重症例では数値が頭打ちになる、ステロイド服用や甲状腺機能低下で数値が上昇するなどの注意が必要です。
【血清クレアチニンからのCockcroft-Gault計算式】
0.741×[(140-年齢)×体重kg×0.85]÷(72×血清クレアチニンmg/dl)
【血清クレアチニンからのGFR推算式】
男性用 194 × 血清クレアチニン-1.094 × 年齢-0.287
女性用 eGFR(男性) × 0.739

熊本CK/CD研究会の活動報告もありました。
腎排泄型薬剤の持参薬に関する多施設実態調査では、アロプリノールなど5品目で、eGFRから算出した用量と持参薬を比較した結果、多くの症例で過量投与となっていました。また、薬剤師の介入によって、用量変更に至った症例も多数ありましたが、中には変更に至らないケースもありました。
同意の得られたCKD患者に対して、病院から情報提供書とアンケートを渡した結果も紹介がありました。その結果から、調剤薬局ではCKDの判断が困難な実態が示唆されました。病院では、カルテを確認すれば血液検査データが入手できます。しかし調剤薬局では、患者から聞き出す以外、その情報は知りえないと思われます。そこで、おくすり手帳にCKD薬剤用量要確認のシールを貼ることにより、病院と調剤薬局の連携を図る取り組みを行ったそうです。宇城地区薬剤師会で試行した結果、80%以上の薬局で、シールの有用性が示されました。また、薬局薬剤師が腎機能を確認するなど、職能や患者利益の向上につながるとの意見もありました。一方では、個人情報の確認や、煩雑さ、費用などの問題も考えられます。
今後、薬剤師間のみでなく多職種も含め、県全体でおくすり手帳を通じた、適正使用も推進を検討があります。玉名地区でも腎機能確認の取り組みを推進したいと思います。