「薬物乱用防止の現状と課題」講師:元麻薬取締官
玉名警察署、養護教諭、保護司会、ライオンズ、有明保健所など多くの関係者にご参加いただけました。
麻薬取締官らしく、捜査や検挙の臨場感ある内容でした。(以下参考)
近年危険ドラッグの被害が叫ばれているが、平成25年現在の薬物事犯検挙者数をみると、およそ13300人中の11000人(84%)は覚せい剤の検挙であった。1700人(13%)が大麻事犯であり、その他は数%となっている。MDMAの検挙は平成17年に約500人をピークとして減少傾向、平成25年現在は20名程であった。一方、危険ドラッグの取り締まりが進み、平成26年には500件の検挙と成果を挙げている。検挙数とは別に生涯経験率(2013年厚労省科学研究班調べ)をみてみると、大麻が最も多く100万人程度、続いて覚せい剤52万人、危険ドラッグ40万人、他を合わせると250万人もが何らかの薬物を用いたことがあると推定されている。15歳以上の日本人口から概算すると、実に50人に1人と考えられる。
麻薬取締官は、厚生労働大臣の指揮監督を受けて、薬物関連5法及び医薬品、医療機器等法に違反する罪について、刑事訴訟法に基づく司法警察員としての職務を行っている。 また、都道府県警察、税関、海上保安庁等の関係機関と協力して、国外から密輸される薬物の押収に努めるとともに、薬物犯罪収益の没収や、泳がせ捜査による犯罪組織の首謀者の逮捕などを図っている。直接的な被害者がいないとされるため、囮捜査を行うこともある。
覚せい剤は、平成9年ころから「あぶり」という吸引法が流行し、第3次覚せい剤乱用期が依然として継続している。再犯率が高く、服役を終えても断ち切ることができない。近年押収量も増加している。
大麻事犯の8割は初犯であり、半数は未成年という特徴がある。また大麻では、自家栽培を行うケースもある。オランダなどマリファナの規制が行き届いていない地域もあり、THC含有量の多い品種も開発されている。
MDMAでは、押収した錠剤の鑑定から、含有量にばらつきが多いことが分かる。ケタミンなど他の薬物と配合されているものもある。
危険ドラッグも、成分が不明で均一でないため、危険性は一様ではない。2014年にはハートショックという商品の乱用者で数十名の死亡者もでている。以前は無許可医薬品としてしか摘発することができなかったが、指定薬物など法律の整備が進み、現在では麻薬取締官も捜査に関与することができるよう法改正となっている。昨年、233の店舗販売業者(九州23店舗を含む)を摘発し、インターネットの取り締まりも強化している。
第4次薬物乱用五カ年戦略で以下の5つの目標を掲げている。
① 青少年や家族に対する啓発強化とその規範意識向上による薬物乱用未然防止の推進
② 薬物乱用者に対する治療・社会復帰の支援及びその家族への支援の充実強化による再乱用防止の徹底
③ 薬物密売組織の壊滅、末端乱用者に対する取締りの徹底及び多様化する乱用薬物に関する監視・取締り
④ 水際対策の徹底による薬物の国内流入の措置
⑤ 薬物密輸阻止に向けた国際的な連携・協力の推進
②~⑤は取り締まりに関する内容であるが、①の未然対策は地域活動として重要であり、学校等における薬物乱用防止講座の充実を期待したい。